賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業の業務の適正化及び家賃等の取立て行為の規制等に関する法律案 問題

新法案に対する問題提起@ 
〜 家賃に関する正当な債権請求を規制する新法案の内容 〜


 ■ 第六十一条 

   家賃債務保証業者その他の家賃債務を保証することを業として行う者若しくは賃貸住宅を賃貸する事業を行う者若しくはこれらの者の家賃関連債権(家賃債務に係る債権'家賃債務の保証により有することとなる求償権に基づく債権若しくは家賃債務の弁済により賃貸人に代位して取得する債権又はこれらに係る保証債務に係る債権をいう。以下この条及び第六十三条において同じ。)を譲り受けた者又はこれらの者から家賃関連債権の取立てを受託した者は家賃関連債権の取立てをするに当たって面会、文書の送付、はり紙、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない

  一 賃貸住宅の出入口の戸の施錠装置の交換又は当該施錠装置の解錠ができないようにするための器具の取付けその他の方法により、貸借人が当該賃貸住宅に立ち入ることができない状態とすること。

  二 賃貸住宅から衣類、寝具、家具、電気機械器具その他の物品を持ち出し及び保管すること(当該物品を持ち出す際に、賃借人又はその同居人から同意を得た場合を除く。)

  三 社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として国土交通省令・内閣府令で定める時間帯に'当該時間帯以外の時間帯に連絡することが困難な事情その他の正当な理由がある場合を除き、賃借人若しくは保証人を訪問し、又は貸借人若しくは保証人に電話をかけて'当該貸借人又は保証人から訪問し又は電話をかけることを拒まれたにもかかわらず、その後当該時間帯に連続して、訪問し又は電話をかけること。

  四 賃借人又は保証人に対し前三号のいずれか(保証人にあっては前号)に掲げる言動をすることを告げること。
 
第七十三条
  
第六十一条の規定に違反した者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する
 

上記が
家賃に関する【正当な債権】を請求する際に適用される予定の条文です。

 問題点を考える
〜 聞こえてくる、様々な問題点の指摘、疑問の声 〜


問題点@
 家賃に関する債権は、賃貸借契約にもとづく正当な金銭債権であるにもかかわらず、
 その権利の行使につき ≪取立て≫ というマイナスイメージの言葉が用いられている。
 新法案の前提となっている社会的事実=立法事実そのものが≪歪曲化≫されている?
 結論が先にありきで、『 貸主=強者、借主=弱者 』 の古典的レッテル張り理論か。

 新法案の説明に関する国側から発表されている案内パンフレット上の記載でも

  ▲家賃債権の請求であるにもかかわらず、≪取立て≫との表現が用いられている
    さらに ≪家賃等の悪質な≫ との修飾語までついている。

  ▲その他にも ≪不当≫ ≪禁止≫ ≪張紙≫ ≪威迫≫ 
≪平穏を害す≫ ≪暴力団≫ 
等々、マイナスイメージの言葉が多用されている。


 〜スーパーのレジで購入代金を清算する場合、売買契約であり同様に金銭債権である。
ですが、決して ≪取立て≫ とは表現されないはず。また、衣食住の視点でも 「 食 」 「 住 」 で 同価値ではないか〜

 
六法全書、民法典においても、『 請求 』 『 催告 』 と表現されているのであり、
正当な法律上の権利の行使について ≪ 取立て ≫ などと表現されていない。


 
問題点A
 【人を威迫し、又は・・・・・人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。】
 とされている点について、端的に悪用される恐れが否定できない。

 違反した場合、刑罰を定めている以上、≪犯罪構成要件≫であろうと考えるが、
 ≪犯罪構成要件≫としては極めてあいまいに過ぎる。
 行為に対する規範・基準を示す機能が軽視され、反面、威嚇機能が重視されている。
 罪刑法定主義の観点から問題ではあるまいか。

 
問題点B
 また、現実には賃貸人が賃借人より威迫されたり私生活若しくは業務の平穏を害するような言動を受けるケースも相当数あり、新法案により想定されているケースが現場事例とかけ離れている。むしろ逆であると思われる。

▲国民生活センターよりのデータは、あくまで、
『 家賃債務保証をめぐる相談件数 』 であるにもかかわらず、新法案での規制は≪家賃債権一般≫でのことであり、根拠として不適切であり公正でない。目的と手段に合理性が無い。
意図的に論点がすり替わっている?
知識人、及び有識者が法案作成に関与しているにもかかわらず なぜ?

 新法案の是を担保する、立法事実が明確ではない。

まずは、『 貸し手 』 の大部分の割合をしめる、一人の民間人・一人の市民たる、『 通常一般の個人貸主の場合での家賃債権請求をめぐる問題事案数 』 を、そのデータの出典・出所を含め明示してしかるべきである。
即ち、今現在でも、新法案の必要性を担保する前提条件たる立法事実が示されていない。
一般個人貸主までも新法案61条、73条で規制・罰則の対象とする立法事実が示されていない。


  この点については、   をご覧ください。


問題点C
 61条が家賃関連債権を行使する側のみを規制しており、かつ罰則付きである。
 罰則付きという点、それ自体がむしろ本質的に 「 威迫 」 と考えられる。


問題点D
 61条が家賃関連債権を行使する側のみを規制している。
 公平妥当性が著しく欠ける。


問題点E
 滞納が継続するので督促となるという関係、時系列であり、
 結局のところ、正当な金銭債権たる家賃を支払っていただけることへのフォローが全く無い。

 ということは、結局は、法律をもって ≪ 無償の貧困問題の受け皿となりなさい ≫ ということなのだろうか。

 『 貧困問題 』 は 国家の責務であり、
 その点で、論点のすり替え、責任転嫁が感じられるのは、我々だけでしょうか。


問題点F
貸金業法での規制をモデルにして新法案は策定されているが、
そもそも、貸金業法とパラレルに考えること自体が不合理である。

≪貸金債務が滞納となった場合に、その請求を断念したとすれば・・・≫
  例、 貸金債務10万円の請求を断念した。
      損失は、10万円+金利部分。 
それ以上は損失は拡大しない

≪家賃債務が滞納となった場合に、その請求を断念したとすれば・・・≫

  例、 家賃債務10万円(2ヶ月家賃分程度)の請求を断念した。
      損失は、10万円。 但し、滞納者は現に賃貸物件を利用・占有の継続が認められる。
      即ち、
時間経過に比例して滞納という損失が倍の割合で拡大し続ける

このように、貸金債務の滞納と家賃債務の滞納では根本的な差異があることはわかりきっているにもかかわらず、なぜパラレルに考えるのか。知識人・有識者なら気が付いているはず。

この点に何かしらの ≪意図・本音≫ があるのではなかろうか、と疑いたくもなってしまう。
従って、この点は、どのようなお立場の方の、どのようなお考えの下で、こうなったのか?
その部分を説明する ≪ 説明責任 ≫ があるのではないでしょうか




 潜在する根本的問題点は何か
〜 「 国民・一般市民の法的責任感覚、倫理感を麻痺させる恐れ 」 がある点 〜


新法が成立すれば、
 賃貸人側は罰則適用を恐れ過敏に反応し、正当な家賃請求ですらためらうことも予想される。
 他方、賃借人側はやむにやまれぬ事情があって滞納することがほとんどであるが、それを正当化するため新法を利用することが簡単に出来るであろう。

 問題の根本的解決は、 「 貧困 」 「 セーフティーネット 」 「 広義の社会福祉 」 であり、
新法はあまりに問題の本質からの逃避のように考えられる。

 かつ、その軽々しいやり方を実施すれば、
その副作用としてもっと重要な 
『 正義 』 を傷つける可能性がある。

≪ 仮面の正義 ≫ が ≪ 真の正義 ≫ を傷つける。

国民・一般市民の法的責任感覚、倫理感を麻痺させる恐れがあると考えます。


 提案 @
 〜 国民・一般市民 = 一般社会通念の感覚からの充分な議論を尽くすべき 〜



 イメージ操作の愚である 貸手は強者 借手は弱者 は 『真実・事実』 なのか、
再度の検証が必要です。


 ≪追い出し屋≫ ≪取立て≫ ≪悪質な≫ 等々、イメージ操作の色眼鏡を外すべきではないか。

 即ち、当新法案の必要性の是を担保する社会的実例・事案をもっと観察するべきと考えます。

 問題の本質からかけ離れているのではないでしょうか。

 新法案を成立させることは時期尚早です。


 また、≪貸手は強者 借手は弱者≫ とのイメージ操作

 いったい 『 誰に利用されているのか 』、 『 誰を利することになるのか。』


 この点も、一般市民の皆さんに 冷静に 考えていただきたい。
 

 

 提案 A
 〜 公平性を担保するため、新法案に加条してはどうか 〜


第▲▲条 
       家賃関連債務を負担する者は、家賃関連債権の取立てを受けた場合に当たって、いかなる方法をもってするかを問わず、正当な理由なく一方的にその取立行為を拒絶し、人を威迫し、又その他の家賃関連債権者の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。

第●●条
        第▲▲条の規定に違反した者は、2年以下の懲役若しくは参百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。


第■■条  
       第61条および第73条並びに第▲▲条および第■■条に関して、虚偽の告訴、告発その他事実と異なる報告等を行った者は2年以下の懲役若しくは参百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。